国語の文章を読むときに、「具体」と「抽象」の行き来ができる子は、読解がぐっと安定してくるように感じます。
論説文では、一般的な話(抽象)と具体例が交互に出てきます。どちらか一方にばかり気を取られると、筆者が結局何を言いたかったのかを見失ってしまうことも少なくありません。
この記事では、「具体と抽象って結局なに?」という基礎から、家庭で親子で取り組みやすい簡単なトレーニングまでを整理します。特別な教材がなくても、普段の会話の中で少しずつ身につけていけるようなイメージです。
国語の読解は「具体と抽象の行き来」が基本
論説文を読んでいると、筆者の主張と、それを支える具体例が交互に出てくる場面が多くあります。
たとえば筆者が「情報社会では他人への思いやりが大切だ」と書いたあと、「SNSで誰かを批判する投稿を見たとき…」のようなエピソードが続く、という流れです。
このとき、子供が具体例のエピソードばかり印象に残してしまうと、筆者の一番言いたかった部分を読み飛ばしてしまいがちになります。逆に、筆者の主張だけをなんとなく読んで、具体例をスキップすると、今度は主張の意味が実感として理解できない、ということも起こります。
つまり、具体例と主張の両方を往復しながら読むことが、論説文の読解では大事になってきます。この「行き来」ができるかどうかで、読解の安定感がかなり変わってくるようです。
「具体」と「抽象」って何が違うの?
「抽象」という言葉は子供にはとっつきにくいので、家庭で話すときは「ルール」と「例」という言い方に置きかえてみるとわかりやすいかもしれません。
抽象は「ルール」「まとめ」
筆者の主張や、一般的な法則、まとめの部分は「抽象」にあたります。「こういうものだ」「こうあるべきだ」と広い範囲に当てはまる話、と考えるとイメージしやすいです。
具体は「例」「出来事」
筆者が主張を支えるために出してくる一つ一つのエピソードや、身近な例が「具体」です。「たとえばこの前、こんなことがあって…」のような話は、ほぼ具体にあたります。
子供に説明するときのコツ
いきなり「抽象」「具体」という難しい言葉で教える必要はありません。「広い話」と「細かい話」、「まとめ」と「例」、くらいのニュアンスで話すだけでも伝わることが多いです。
読解の文章を一緒に読むときに、「いまは広い話してるね」「ここは例だね」と軽く声をかけるだけでも、子供は構造を意識するようになってくれるかもしれません。
親子でできる「つまり何?」「たとえば?」の会話
家庭で取り組みやすいのが、親子の会話の中で抽象と具体を行き来する練習です。特別な教材はいりません。
具体的な話には「つまり何?」
子供が学校の出来事を話しているとき、「つまり、どういうことだったの?」と聞いてみる。
たとえば「今日、〇〇くんがこんなことを言って、△△くんがこう返して…」と細かいエピソードを話していたら、「つまり、みんなで言い合いになっちゃったってこと?」のように、まとめ直す練習を一緒にやってみるイメージです。
これは子供にとってハードルが高い場合もあるので、最初は親が代わりにまとめて「こういうことだよね?」と示してあげるだけでも十分です。
抽象的な話には「たとえば?」
逆に、子供が一般的な話や「〇〇って大事だよね」のような抽象的な話をしたら、「たとえば、どんなとき?」と聞いてみる。
具体例を挙げさせることで、その子が本当に意味を理解しているかが見えてきます。わかっていなかったら、親から例を出して補ってあげると、言葉のイメージが広がりやすくなります。
勉強ではなく会話として続ける
この練習のいいところは、勉強の時間を作らなくていいことです。夕食中、お風呂、移動中など、会話の流れで自然に取り入れられます。
「これ、国語の練習だよ」と切り出すと子供が身構えてしまうので、あくまで普通の会話の中にそっと混ぜる、というスタンスがおすすめです。
選択肢問題で効いてくる「言い換え」の感覚
具体と抽象の感覚が身につくと、選択肢問題にも効いてきやすくなります。
中学受験の選択肢問題では、本文と選択肢で言葉が意図的に変えてあることが多くあります。本文が具体的なエピソードで書かれていれば、選択肢はそれを抽象的にまとめた表現になっている、という形です。
言葉は違っても意味は同じかを見抜く
「本文はこう書いてあるけど、選択肢はこう言っている。これって同じ意味かな?」という判断が、選択肢問題の核になる部分です。
具体と抽象の行き来に慣れていると、「違う言葉でも同じことを言っている」ことにピンと気づきやすくなる、ということが期待できます。
答え合わせで「どれと同じ?」を聞く
問題を解いたあとに、「正解の選択肢は、本文のどこと同じことを言ってる?」と聞いてみてください。
子供が本文の該当箇所を指で示せれば、言い換えの感覚が育ってきているサインです。示せない場合は、一緒に探してみるところから始めるのが取り組みやすいかもしれません。
家庭でのサポートのコツ
具体と抽象のトレーニングを家庭で続けるときに、押さえておきたいポイントを2つだけ。
一度に完璧を求めない
具体と抽象の感覚は、一度教えたからといってすぐに身につくものではありません。何ヶ月もかけてじわじわと育っていくものなので、焦らずに続けるのがよさそうです。
新聞のコラムやニュースを題材にする
子供向けの新聞コラムや、一緒に見たニュース番組は、この練習の題材として使いやすいです。「この人は何を言いたかったの?」「具体的にはどんな例を挙げてた?」と聞くだけでも、立派なトレーニングになります。
問題集を解かせなくても、日常の素材でできる——ここが忙しいご家庭には向いている部分かもしれません。
親御さん自身に読んでほしい一冊
子供に具体と抽象を教えるうえで、親自身がこの概念を少し深く理解しておくと、教え方に自然な深みが出てくるように感じます。
そのきっかけとしておすすめなのが、細谷功さんの 『具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ』 です。ビジネス書として書かれた本ですが、「抽象化」という思考の動きを、分かりやすい例とともに丁寧に解説してくれる一冊です。
読解の直接的な指導書ではなく、親御さん自身が普段の仕事や日常で役立つ本として、気軽に手に取ってみるのがちょうどよいかもしれません。
まとめ
- 論説文の読解では、具体例と筆者の主張の「行き来」が大事になる
- 子供に説明するときは「ルール」と「例」くらいの言葉に置きかえてみる
- 会話の中で「つまり何?」「たとえば?」を聞き合うだけでトレーニングになる
- 選択肢問題では「言葉が違っても意味は同じか」を見抜く感覚が効いてくる
- 特別な教材はなくても、新聞コラムやニュースを題材にできる
具体と抽象の感覚は、国語だけでなく他の教科や、大人になってからのコミュニケーションでも役立つものです。問題集を解かせる前に、まずは普段の会話の中で、少しずつ意識してみてはいかがでしょうか。
